2009年12月20日(本部長通信763)
ロシア外遊記(4)

 朝から午前中に始まる指導で、頭を悩ますのです。上級者の段のメンバーで責任者の指導をするのです。私は、ある意味で今まで培った指導をするので、その指導内容を黙々と進めるだけなのです。
 10時になって、早速40名のメンバーの指導です。念入りに柔軟体操とストレッチをこなして、基本の練習を押し進めるのです。さらに、道場が広いので蹴りの移動稽古をしっかりとこなし、組手に行こうとするときに、メンバーの疲れがピークに来ているということで休憩を取るのでした。
 ロシアの道場生から人気を受けようとは思わない指導ということなのです。極真会館本部で大山総裁から受けてきた指導を出来るだけ再現しようという気持ちで、総裁に成り切ろうとした指導ということになります。
 カザンのボリス師範との信頼関係が生まれ、こうしてカザンという中心都市に来たのであるから、極真の真髄を示さなければならないという固い決意が私にはあったのでした。問題は、伝統の継承であると誓ったのでした。
 このソ連邦に所属していたカザンに何が何でも伝統のくさびを打ち込みたいという執念のような指導になったのです。このままやさしく指導して極真空手とはこんなものかと思われたくはなかったし、何よりも、極真会館の伝統の存在感を示したかったのでした。
 ある意味で、衝撃の波紋を展開したことになったのです。これからのロシアは世界に多くの人材を輩出することは間違いないのです。そこで伝統の極真を提示することも必要であると思えたのでした。それは、私の存在誇示ではなく、強いインパクトによってロシアの道場生が将来の展望を見出すことが出来るようにとの動機でした。
 午後からは、道場生の車に乗って、由緒あるロシア教会を見物に行きました。あたり一面冬景色で、教会の近くの湖も一面銀板に凍りついていました。そこで見た光景は、イエスキリストの死の後、復活の第一日の儀式でした。人々が祭司よりオリーブの油で額に十字を書かれ、荘厳な儀式として見せつけられたのです。
 それも、このカザンでは10年前からロシア正教が認められ信仰を許されるようになったということですから、いかに共産主義者が教会やモスクを破壊していたのか信じられないくらい人間の心の問題を徹底的に否定したことになります。
 そこで、極真空手も心身ともに人間のスピリットを養う道なので、その意味では10年前から本当の意味で極真空手が認められ発展してきているのだと確信させられたのです。夕食はボリス師範、アラン師範、手塚会長と私で和やかな話をしていました。世界の極真の本流は、僅か一握りの集まりの中から出発し大きく花を咲かせるのではないかと思えました。