2009年10月19日(本部長通信701)
私のお嫁さん(1)
私が千順さんに初めて出会ったのは、二十四歳になったばかりの田舎育ちの娘さんというところでした。純真なアルプスのハイジのイメージがぴったりしていました。私は結構老け顔でしたので、当初は親父と娘ぐらいに離れているように見えたものです。それでもたった一歳しか違わなかったのです。
彼女に出会った瞬間、私は思わず一目ぼれだったのです。この出会いは、自分の人生を大きく変える最大のチャンスであると、先祖の導きのように思えたのでした。彼女は、私をそんなに気に入った人とは思わなかったようですが、私自身としては、彼女を大切にするあまり、ストーカー的な積極果敢な付き合いが始まったわけです。
彼女の故郷は、広島県で、島根県寄りの山間の高原である八幡という地区の出身でした。実に、平家の落人部落ではないかと思わせられる風景でした。彼女の育ちは、規律が厳格で、私も曖昧な表現はできなかったのでした。
彼女はとても絵が好きで、手紙にはイラストが描かれていました。文字もロマンチックな字体で、私に好感と夢を抱かせるような内容を綴ってくるのです。それゆえ、ますます心は彼女の虜になったのでした。
私は、結婚したいという気持ちが大きくなりましたが、私も夢と理想が大きい二十代であったので、人生に勝利すべき厳しい試練の道を行かなければならないと決意をしていたのでした。特に、極真空手の修行は生半可に耐えることができるものではないのです。それゆえ、彼女が行く道は、結婚したら、耐えることができないことがたくさんありすぎるだろうと思えたのでした。
好きだったので、ある意味で、私は空手の修行に没頭していけたのです。二十四歳のときは、まだ、黄色帯で、空手のイロハが理解できるぐらいだったのです。そこから空手家として黒帯をいただくまで四年の歳月がかかったのでした。彼女の心に、ひとえに私だけ存在していたのかどうか疑問ですが、私は彼女だけが私の心を占めていたのでした。