本部長通信268 2008年8月8日

道場生に対する指導者の希望(27)


 師範は、大きな夢を抱いて故郷を捨てたのでした。十八歳の若かりし青春の門で、両親に勘当同然で自分に人生を切り開こうとしました。高校三年までに、人生の何たるかを感じ、準備に準備を重ねて、卒業と同時に出発したのでした。世間という大海原で、信じれることを実践する人生が課題でした。何も恐れるものがなかったのでした。穏やかな春の日差しが降り注いだ仙台駅でした。
 家族と別れる悲しみより、未来への憧れは強く、寂しさと隣り合わせの一人きりの旅立ちだったのでした。自分で故郷には愛する家族と幼馴染の友達と、隣近所の心に思う人との別れを決意したのでした。当時は新幹線はありませんでしたから、特急やまびこの動き出す列車の窓辺に、青葉山の眺めが見え、動き出す景色を心に刻んだものでした。
 仕事をして、世間の厳しさを感じ、理想と現実のギャップを身に染ませながら、一人夜空を見上げるアパートの一室でした。この町で夢を見ながら、自分にもう少し強くならなければならないと言い聞かせたました。過ぎ行く時の流れに、ひょっとして自分は負けてしまうのではないかと不安に思う日もありました。
 朝の動き始める街のめまぐるしさの中で、人の波に埋もれてしまうのではないかと何度も感じながら、歩んでいった日々いでした。実家から離れれば離れるほど、昔の自分を振り返ってしまい、持ってきたアルバムに心奪われていました。若き両親との絆がいまさらながら思いい出されて、故郷に戻るときには、ほめてもらおうと何度も言い聞かせてました。