2019年8月23日(八段語録3616)
修行時代の一つの光


 極真での修行の道は、厳しい内容が多かったのです。
仙台発やまびこ号で、東京に出かけ、高校も卒業することも忘れて突っ走りました。
時に、特急やまびこ号ですから、今思えば、経費を惜しみなく目標に投入したのでした。
もうすでに、人生を決定して、出発していましたので、親の言う事は全く耳に入らなかったのです。

純情そのもので、この世界に入ったのですから、入門してからの歩みは、希望だけでした。
その修行が、一年、そして二年と継続すると、白帯でしたので迷いも生まれたのです。
強さにおいて、それ程でもなかったので、稽古では、ウドの大木のようで、壁まで押し倒されたのです。それだけに、総本部での修行で行き詰っては、全国行脚の旅に出る始末でした。

決して修行の道を辞めるつもりはないのですが、休憩を余儀なくされたのです。
内弟子になって、若獅子寮で生活するのは抵抗があって、あくまでも楽な外弟子でした。
もともと、個性が強いので、規則に強いられるのは性に合わないのです。
意気込みと成長は別物であると実感するかのように、低迷していきました。

総本部に籍をおきながら、北海道まで流浪の旅を続けて、北海道の高木道場の近くに腰を下ろしました。実に敗北であり、どん底であったことは間違いないのです。
その時期に、出会ったのが、今の妻という事でした。
十年間、結婚に応じてもらうという気配はみじんも無かったのです。
もちろん、手を握るという事もなく、嫌われないように修行の励みにしたという事は言うまでもありませんでした。

正式に青帯になったのは、二十三歳の時でしたから、五年の歳月をかけたのです。
それは、極真の修行だけをしたというよりは、様々人生経験をしたという事です。
それで、酒もタバコも嗜まなかったし、男女関係も縁が無かったのです。
唯一、今の妻と出会った、人生の修行を本格化させたという事に意義があったのです。

本格的に自分が磨き始めたのは、この女性と出会ってからという事になりました。
それから、昇級に関しては、一年ごとに上がっていったのです。
一目惚れしてしまう事で、目標が曖昧ではなく、真剣な修行になったという事になるのです。
そこに、自らの主権をしっかり築いて、目標を明確にしたという事は言うまでもないのです。

十代の青春時代と違って、一目惚れすると、自分の思い通りにならない時こそ、踏ん張るという事になったのです。
それから、一人前になって、この女性を妻に迎え入れるに相応しい人格を目指そうとしたのでした。