2019年6月18日(八段語録3560)
独身生活は長かった


 婚約したのが二十四歳でしたが、その後十年の間は一人暮らしという事でした。
極真の修行を極限まで突き詰め、結婚どころではなかったのかもしれません。
それだけに、選手として三十四歳まで続けることができたのでした。
全日本の選手としては、当時最年長まで戦い抜いたという事になりました。

独身で三十四歳までの生活は、選手という事もあって不可避的であったのでした。
別に愛の破局をもたらすこともなく、お互い信頼しての婚約時代でしたが、実に長かったのです。
十年の歳月ですから、最初からそうであると思えば、気が遠くなるという事もあるのですが、それ以上に理想に燃えていたのでした。
生涯の在り方が、人それぞれ違うと思うですが、私の場合は特異的であったという事です。

修行ゆえに、夫婦生活を始めて、愛し合って生きるという期間ではない、選手生活という事でした。
一般的には、空手修行ゆえに、気の毒な選手という事でしょうが、修行に集中はできたのです。
独身という事での賜物でしょうか。妻との愛情はプラトニックに十年間費やしたのでした。
それだけに、婚約を守り抜くという気持ちでしたが、誘惑という破壊的要素も、周りから及ぼしてきたこともあったのですが、修行のみで気づかなかったのというのが本音です。

ところで、独身時代を決別して、東京の三鷹で夫婦として生活をしたのですが、段ボール箱一つから始めたのです。
それも、隣はベニヤ板一枚の安アパートからでしたから、開き直って二人で人生を過ごすという事にしたのでした。
何もなくても、楽しみと喜びが絶えない生活で新鮮であった思い出が残っているのです。
独身生活が長かったという事が、夫婦の絆が強まったようにも思えたのです。

今は、三人の子供に恵まれ、長男はいつしか後継者になっているのですから有難いものです。
それもこれも、独身時代に妻と育んできたプラトニックな愛情が根底に流れているのでしょう。
つねに、純粋な絆が生活を覆ってくれているようです。