2012年6月16日(八段語録1715)

更生への道(2)


 一生懸命に働いているという話は聞いていたのでしたが、今回の面接で分かったことが、女性と付き合っていて、その女性が妊娠をしているというのです。対象者の男性の両親は、未だ何も社会経験がないので中絶するようにと、女性に言うようにという事でした。そして、その女性は、父親しかいないのですが、未だ親父には話していないというのです。
 私の社会的常識を模索しても、少年院を出所したばかりで、収入も少なく、生活能力もないのに、家庭生活ができるかという事を慎重に考えてみても、無理という結論しか出ないのです。どんな判断を下せば良いのかと悩む日々が続いていました。本人は、その事で両親の反対を押し切っても、子供を産みたいと言っているのです。そして責任感を持って、生活をしていくと表現していました。
 また、私の常識の範囲を模索するのですが、未成年の子供が、子供を産んで、どうやって育てていくのかと、怒鳴りたくなる気持ちも湧き上がってきます。個人的には、男女の付き合いは良いが、子供が生まれるような関係を持つ事は、無責任すぎるのではないかという意見なのです。結局は本人の両親の意見と一致するのですが、面接に入って、本人がいい加減に思っていない様子を見ると、むげに否定できないのです。
 19歳と17歳の男女の仲で、妊娠三か月という事ですから、社会的なアドバイスをするに留めました。女性とも私も何度か合っているのですが、精神的には強い女性でした。それでも、将来家庭を維持して、子供を育てていく事ができるかという事を考えると、常識的範囲で無理という判断を下さざるを得ないのです。そこで、私の姿勢は、この件には触れずに、二年間の保護観察期間の主要である、守らなければならない事を中心に考えようとしたのです。保護司として精一杯の姿勢だと結論つけたのです。
 個人的なプライベートの事に関しては、本人が責任を持つようにという事に留め、犯罪を起こさないような指導と環境整備を整えるという意識で指導に当たりました。それで、妊娠については、本人と、両親とその家族の判断に任せ、社会的責任を持つ事の意義と価値について話をしたのでした。そこが、保護司としての指導の限界であるという思いがしたのでした。もちろん、気持ちの中で彼の成長を祈るような思いをしたのです。