2016年6月22日(八段語録2817)
熱望(14)

対象者b 6月12日午後6時
 前途有能な青年です。運転免許証を4月に再び取得して、一か月一生懸命に働いて、三十万近い給料をもらったと喜んでいました。表情もすっきりとして生き生きしています。「健康そのものだ」と本人は話してくれます。保護司として、本人に「もう少し思慮深すれば、事件を起こさずに済んでいたであろう」と話すのです。危険ドラックであり、女性との問題であり、犯罪に手を染めたという事に、なっているのですから、対象者を哀れに思うばかりでした。それでも、今の気持ちは、私の話を聞いてくれます。出所してきた時には、疲れたせいもあって、母親を突いて、私の話が終わるように仕向けていました。それが、一か月も過ぎた時から、一人で来訪するようになると、長い話になっても、しっかり聞き入ってくれるようになっています。私が対象者の過去を哀れに思う事を、強調するものですから、「そのような姿ではいたくない」という気持ちが強くなるようでした。敢えて、今の対象者の姿よりも、過去の悲惨な状態を誇張して、とんでもない人生を行くかもしれなかったと話をするのです。それでも、御両親が捨てておかないで、大きな愛の懐に抱いて、更生させようとしたのだから、「感謝しなさい」話しかけます。素直にうなずいてくれます。母親の苦労の姿、父親の愛情を感じるようでした。今でも、実家から職場に通っているのです。そのような意味では、良い息子なのだという事のようです。今の仕事が、どれだけ続けていけるかが、勝負であると対象者は思っているようです。その為に、トビの資格を取って、将来的には親方になって経営をしていきたいと思っているようです。

対象者b 6月26日午後6時
 キリットして来訪してきました。犯罪に終止符を打つという強い気持ちが漲っています。犯罪に至れば、必ず終わりが来るけれども、まじめに働けば、一生継続することができるという事を話していました。出所して二か月が過ぎて、本人も仕事に自信を持ってきているようでした。今日は「悪い事は除去することができているのか」という事を尋ねたのです。特に「女性関係に関しては慎重になるべきである」という事と、「友人関係で悪に引きずり込まれることが、無いように注意すべきである」と強調しました。薬物に対しても、「必ず誘惑があるから気をつけるべき」と老婆心ながら話をしました。二十歳ですから、体力が有り余っているようですが、仕事でぐったり帰ってきて、すぐに休んでしまうと話していました。そんな対象者の話に、忙しい時、一生懸命な時、その時が一番輝いているという事の話をするのです。それから、会社での事、家での事、友達の事、何でも話したいことを話すように促すと、今は、何故かしら、前向きな話をしてくれます。充実しているのだろうと思うばかりでした。保護司として、厳しく指摘すればいいのかもしれませんが、聞き手に回ります。できるだけ、話を聞いて、救済しようと思うのです。もちろん、過去には、良き話だけを信じて、再犯に陥った対象者もいました。それでも、私の姿勢は、対象者の事を理解してあげることに精一杯になります。