2011年5月9日(八段語録1308)

復興への道(25)

 少年時代に両親に願われたことは、早く手に職を付けなさいということでした。新聞配達をする傍ら、大工になるべきか、設備会社に入寮して土木作業の資格を取るべきなのかと頭を悩ましていた時期がありました。両親の時代の職種は、親方に弟子入りして十年前後の師弟時代に学ぶ技能によって、一生職人としてやっていくということでした。
 ところで、今の時代はというならば、高学歴社会であり学校教育が重要視されているのです。手に職を付けるという事よりも、理論的分析ができ知識を身につけ、高度な専門知識を学んでいくという事に変化してきているのです。高度成長を果たした社会は、職人というよりは、高度な知的スペシャリストを求めるようになってきたのです。
 つまり、仕事に対する姿勢とアプローチが、私が両親から願われた事と、大分違っているのです。十年前後の師弟時代で学ぶ技能も、今でも存在しますし、そのような方向性も維持されているのです。しかしながら、それ以上に十年どころか、それ以上の年数をかけて継続的学習をしながら高度な知的能力を身につけていかなければならない時代にも入ってきているのです。
 それはとりもなおさず、これからの社会は教育が中心で、学校教育における知識の獲得が余儀なくされるのです。それ故に、学習し続けていく時間が限りなく長く、それに耐えられる精神力と忍耐力そして体力が必要不可欠になってくるのです。
 それでは、人間に要求されるスペシャリストとしての知的獲得に必要なものとは、一体何であろうかという事になります。モラトリアム時代が長いという事なのであり、それなりの精神力が必要になることは間違いないのです。昔の時代のように短い時間で習得できる「手に職」では大概獲得できた技術も、今の時代では強い精神力を維持して初めて獲得する事ができるという事になるのです。
 最終的には、日々学ぶことが習慣にならなければならないのです。長い期間を通じてスペシャリストの資格を得、更に学習し続ける精神力はいかばかりでしょうか。それを果たす事ができるのが、武士道としての精神力形成という事だと、自分なりに考えてしまうのです。
 今、千葉にも仙台にも、資格獲得に専念している指導者がいます。もちろん達成する為には相当な努力と期間が必要になるのです。今まで空手道で培った精神力を持って勝負しなければならないわけです。これからの道場生の目標達成する為の精神力を高めていこうとする、試金石としての意味も大きいのです。知識社会の中心問題を解決する人物モデルとしての役割もあると思われます。