本部長通信29 2007年5月5日

転換期の武道

 武道の目的は、どこにあるのかというと人間として健全な人生を歩むというところにあります。誰も、中途半端な人生を願わないというのであります。自分の人生を振り返ると結構正さなければならないことが多いのであります。本来の自分の人生はこうあらねばならないと色々思うのであります。この地球、あるいは世界全体ということを考えますとすべてを知り尽くして何もかも不自由なく生きることなど到底できないのであります。確かに科学が、あるいは精神文化が発達してきましたが、それでも完全に分かり合えるところまできているかというとそうではないのです。

それゆえ私たちは自然界の共鳴体となって、共に調和ができる、あるいは正しく管理できなければと思うのであります。そこには自然破壊をもたらさないということはいうまでもありません。
 武道の目的として第一に挙げられることは、人間として人格をあらわしている私たちが、十人十色の個性をどのように発揮させるかであります。いわゆる一人ひとりが、標準タイプを持って地上に生まれているわけであります。実体を持った人格として、どのように社会全体に影響を与えていくかなのです。

 第二の目的は、私たち人間が充実した気持ち、いわゆる感情が満たされて最大の幸福感を抱くその基準をどのように築くかであります。自分たちの精神が愛情あふれる環境をどのように達成させていくかを生涯かけて体験することが第二の重要な目的になるのであります。集約しますと、環境管理と幸福感という二点であります。

 ところが、今の社会環境では善よりは悪のほうが向きやすくなっているのであります。

毎日のニュースは暗い事件を取り扱うことが多いのであります。青少年問題もしかり、社会問題もしかり、人格の基準や愛情の基準が見当たらなくなってきているのであります。今、教育基準法の改正や社会改革のための制度を検討しているのであります。徐々に成果を表してはいるのです。しかし、私たちは、武道という切り口から本来の方向性を提示するのであります。その方向というものは、武道を求めるものが、本来の人間としての肉体、さらにその良心を追求することなのであります。

 400年あまりの歴史を成してきたのが、空手道です。その目標は、環境管理と幸福感という二点に集約できます。これは武道としての転換ということを意味します。武道を通じて人間としての本来の道を追求することです。追求するには、今自分がどうなっているのか、そして問題点を解決するのであります。だから、武道を中心に据えた生活が重要であると主張するのです。