本部長通信15  2006年10月15日

実践的な極真空手で 子供たちの健全育成を

自己管理を教える


大山倍達(一九二三〜九四)が創始した極真空手は、普通の空手のように、拳(け ん)が相手の体に当たる前に寸止めしない。実践的な空手で、「けんか空手」とも呼 ばれ、一時は大きなブームになった。中学、高校と柔道をしていた私も、「本当の強 さを求めて極真空手に出合った。実際に相手を倒して一本という柔道の感覚から、極 真空手がぴたっときた。池袋にある本部道場で稽古を終えた私に、大山総裁はよく「 真実を極めた空手が極真なんだ」と話してくれた。 練習の組み手でも、実際に相手 に拳を当てる。サポーターは付けるが防具は付けない。危険を伴うので、練習は指導者の管理の下で行われる。私も、その極真空手を通して青少年の健全育成を図りたい 。基本は礼儀作法である。まず正座から始めて、相手を尊敬する、組み手を行った後は感謝の礼を尽くす。それによって尊敬や感謝の念を植え付けていく。  武道が優れているのは、技と礼儀が一体となっていることだろう。試合においても 礼儀を守ることが重視される。その上で、実際に体に拳を当てる、叩くことを通して 、相手の痛みが分かる。今はゲームの中で人を簡単に殺している。でも、人を叩くというのはどういうことなのかは、自分が叩かれてみて初めて分かる。分かると、人に手を出すことはできなくなる。肌身で感じることが大切である。そういう中で、自分を律する心が育ってくる。練習が、人間としてやっていいこと、いけないことを教えるしつけになっている。人間的にも成長しながら上の段に上がっていくので、人格的にも技の上でも自然に目上の人を尊敬するようになる。不良の溜まり場には絶対にならない。 人は立場が上にいけばいくほど、人から管理されることが少なくなり、自己管理が重要になってくる。だから、子供たちにも自己管理を教える。自分の精神を絶えず健全な状態に保つようになれるのが空手である。日々の練習は同じことの繰り返しだが 、その中で健全な精神を保つ力を身に付けていく。空手の道を求めることで、自己創造、自己管理ができるようになる。私は自身が体験してきたことを子供たちに伝えたい。 四十過ぎで道場を構える時、正しい精神状態を保つ空手を教えるようにしたい。それによって正しい社会人が育つような道場になる。普通の極真空手は強さだけを求める傾向が強いが、礼儀を基本に、家族や自然を愛する、コミュニケーションができるような人に育てることを目指す。 道場では年に四、五回、父母会を開き、精神科医やカウンセラーなどの講師の話を聞いて勉強している。大きな家族のつながりの中で練習するためだ。空手を通して、家族のきずながつくれるような人間性を育てたい。道場は一つの大きなファミリーだと考えている。

目標は会員3000人


会員(入門生)の七割が幼稚園から小学生までの子供で、最年少は三歳。中学生以上の一般人が三割で、女性は一割ほどだ。道場に「レディース・コース」の張り紙があったのは、大人の女性向けのコース。多くは、子供の練習を見ているうちに自分もやりたくなったお母さんたちだ。今、会員は約五百人で、県内に十二道場がある。一般人は極真の真髄にふれて、黒帯の指導者になれ、その中から、道場を開く人も出てくる。現在、専従の指導員は六人。経営的にもしっかりさせるため、道場には珍しい株式会社組織にしている。本体の極真会館は財団法人だ。ここで育った指導員が新たに道場を開くことで、私は仙台市内で三十道場、三千人を目標にしている。毎年の入門者が約二百人、無理な目標ではない。会社経営のように、しっかりした将来計画を立てている。
そのため毎月、地元紙に入門生募集の広告を出し、指導者三、四人と週五回、毎月三万枚のチラシを各戸に配る。経営努力を怠らないのが、持続的な発展の秘訣だ。
「ぐれかけている」「いじめられている」など、親はいろいろな課題を抱えて、子供を道場に連れてくる。そんな子供たちも、道場で空手の練習に取り組んでいくと見違えるほど変わっていく。定期的に審査会を行い、合格すると級が上がっていくが、
上達して帯の色が変わっていくごとに、礼儀もしっかり守れるようになる。小学生以下の幼年部はほぼ全員、保護者が練習に同伴し、後ろの方に座って子供たちを見ている。ガラス張りなので指導員もおかしな指導はできない。
最初の一年は基本を教えるが、二年目から組み手をするようになると、その真剣さに保護者も驚く。道場は、祭りなど地域の行事にも積極的に参加している。地域に役
立つ道場を目指しているからだ。法務大臣から保護司を委嘱されている私は、刑務所を出た人たちの更生保護にも協力している。消防団活動では、仙台には四百人の団員がおり、組織の中核にいる。人づくりから地域づくりへ、私の活動は広がっている。